Does faceted display in a library catalog increase use of subject headings? (OPACのファセットブラウジングで件名の利用が増える?)

いわゆる「次世代OPAC」で実装されたファセットブラウジング機能は,キーワード検索の結果に含まれるレコードのメタデータを解析して,著者・資料種別・言語などのサブセット毎に集計して表示することで,ユーザが必要な資料を発見するサポートをする仕組みです。

なかでも件名は,カタロガーがその資料の主題を分析して付与する統制語で,図書館の書誌レコードをリッチにしているメタデータのひとつです。日本では書誌レコードに件名が付与されているレコードが少ないのでファセットの効果が最大限に発揮できないという話をよく耳にしますが,「ファセットブラウジングで件名はあまり使われない?」という刺激的な論文が…。ちょっと気になったので自分用にメモ。要約してみましたが変なところがあると思いますので原文を読んでください。

 

Kathleen Bauer, Alice Peterson-Hart, (2012) "Does faceted display in a library catalog increase use of subject headings?", Library Hi Tech, Vol. 30 Iss: 2, pp.347 - 358.

DOI (Permanent URL): 10.1108/07378831211240003

問題意識

ユーザテストとログファイルの分析から,ユーザの検索行動を調査

  • 件名のファセットはどれくらい使用されているか?
  • ファセットをうまく使いこなすには何が重要?
  • ファセットの導入によって,従来のインタフェースに比べて件名の利用が増えているか?

背景

  • Yale University は Yale College (学部) と5つの研究科から構成
  • Yale University Library で検索可能な書誌レコードは800万件
  • 2007年12月から2008年3月に Orbis (従来のOPAC)の調査を実施。3777件のアクセスのうち,タイトル検索が全体の41.8%,ノーヒットが21.4%,件名の使用は10.0%のみ
  • その後 Google ライクな検索インタフェース ”Yufind” (Vufind) を導入するが旧来の "Orbis" へのニーズが高く,2010年1月からは両方を併用

ユーザテスト

  • 2008年4月と2009年10月にユーザテストを実施。
  • 学部生5人を対象に調査。Morae software を使って記録して分析
  • 2008年の調査ではファセットを使わせる課題を与えたが,80%の学生がファセットの項目が長すぎて戸惑ったり,無関係な件名を選択して検索に失敗。ただファセット自体の仕組みには関心あり
  • 調査の後,ファセット表示位置を画面の左側に変更,ファセットをカテゴライズして見出しをつけて orginal search に関連の深いものが表示されるように改修
  • 2009年の調査ではファセットの利用率が向上し,ファセットに関連する課題のうち1問は5人全員が,もう1問は3人がファセットを使用して解答に辿りついた
  • 調査に参加した学生からは Amazon や “Barnes and Noble online” といったサイトと似ていて使いやすいとか, Orbis にファセット機能があればもっと使うというコメントが

ログファイル分析

  • 2011年1月から5月にかけて Orbis と Yufind のログを調査
  • Yufind は 271,532 件のアクセスがあり,ページビューは 480,311件。キーワード検索が24.1%に対して,書誌詳細画面の表示が66.3%
  • Orbis は Yufind の2.3倍の 632,445件のアクセスがあったが,検索回数は Yufind の8.3 倍
  • Yufind は Google に書誌レコードのクローリングを許可しているため,Google 経由で直接 Yufind の書誌詳細画面にアクセスするユーザが多い

Yufind 導入後のユーザの検索行動

  • 調査期間中,全体の34.8%が書誌詳細画面で著者名典拠や件名のリンクをクリック,27.7%が2回目の検索を実行,25.4%がファセットを使用
  • 件名の使用で最も一般的だったのは書誌詳細画面からの件名リンクで全体の23.5%
  • Yufind のファセットは 著者名・分類・件名・言語・資料種別で,最も使用されたのは資料種別で31%,言語27.8%,件名20.1%,著者名14.1%,分類7%と続く
  • 言語は“English”,資料種別は “books/pamphlets” や“online”がよく使われていた
  • 件名はユーザによって様々だが,“united states” だけは突出して使われていた
  • 全体のなかで,ファセットの件名が選択された割合は5.1%で,書誌詳細画面の件名リンクとあわせても全体の28.6%
  • Orbis では件名が指定されて検索されたり,書誌詳細画面の件名リンクがクリックされた数は全体の6.4%

結論

  • Yufind は図書館Webサイトのトップで提供しているにもかかわらず,Orbis に比べて利用が少ない
  • Orbis と Yufind とのトラフィックの違いは Yufind で Orbis でできなかったファセットブラウジングができるようになったことよりもむしろ,Googleからのアクセスが可能かどうかに起因している
  • ユーザはまず Google で情報検索行動を開始するとよく言われるが,この調査でGoogle 経由の書誌レコードへのアクセスをみても,図書館も例外ではない。図書館の書誌レコードを Goolgle へ提供することは重要である
  • Yufind での件名の利用は検索行動全体の28.6%で,Orbisの6.4%よりも多くなっているが,ほどんどはファセットブラウジング以外での利用
  • 図書館が検索過程において件名の利用を増やすための手段としてファセットブラウジングは最も良い方法であるとはいえない

感想

まずはじめに驚いたのが, Yufind と Orbis を併存していて未だに Orbis の方を利用するユーザが多いという事実。日本でも某大学は併用していますが,ユーザが旧来の Orbis を使い続けたい理由とは何なのか気になりました。

さて,本題の件名の件ですが,確かに統計上はファセットブラウジングの導入によって件名の利用が増えたとはいえないというのはわかります。

ただ,Yufind ではファセットの項目のなかで件名は一番下に配置されているので,そこがひっかかりました。Summon のアイトラッキングを計測した報告書で検索結果のはじめの3件程度しか見ないユーザが多いらしいので,統計で利用が少ないのに一番上部に表示している Author にかえて Topic を配置してみるとかすると統計もかわってくるのかもしれませんね。

日本でもOPACの検索結果画面でファセットを表示するところも増えてきましたが,どういう項目をどの順序で配置するかはユーザの検索行動を左右するわりと重要な判断かもしれないと改めて思いました。

件名の利用を促進するための機能としてファセットブラウジングが有効かどうかは別にして,ファセット自体は全体の1/4程度のユーザが利用しているという統計をみて少し安心しました。

でもこの論文で一番気になったのは,結論に書かれていた一文。これはまたの機会に。

Putting library records in Google should be a priority.