美術館の情報発信 「美術情報・資料の活用法 ― 展覧会カタログからWeb まで」

少し前になりますが,2011年12月に奈良国立博物館で開催された「美術情報・資料の活用法 ― 展覧会カタログからWeb まで」セミナーの資料が公開されていたので紹介します。

全国美術館会議の情報・資料研究部会主催のこのセミナーは,2009年から2011年にかけて3回開催されました。 各回の開催報告と充実したレジュメがWebサイトで公開されています。

「美術情報・資料の活用法 ― 展覧会カタログからWeb まで」

全国美術館会議 情報・資料研究部会 企画セミナーI
http://www.zenbi.jp/data_list.php?g=87&d=14
全国美術館会議 情報・資料研究部会 企画セミナーII
http://www.zenbi.jp/data_list.php?g=87&d=21
全国美術館会議 情報・資料研究部会 企画セミナーIII
http://www.zenbi.jp/data_list.php?g=17&d=44

このセミナーでは,美術館における美術情報・資料として

  • 美術館が刊行する展示会カタログや,年報・紀要などの逐次刊行物
  • 美術館で所蔵する作品の情報

の大きく2種類をとりあげて,美術館をとりまく現状の問題点と,今後これらの資料をどのように活用して情報発信していくかについて講演がありました。

詳細についてはレジュメを確認していただくとして個人的に印象に残ったのは,「展示会カタログや逐次刊行物に関しては,まずは大学図書館や国立国会図書館に寄贈すること」というアドバイスでした。

これには資料保存という意味合いもありますが,むしろ寄贈先の機関が目録を作成することで資料の visibility を向上させること強く意識しています。つまり大学図書館に寄贈することで NACSIS-CAT,また国立国会図書館に寄贈することで WorldCat (国立国会図書館がOCLCに書誌データを提供しているため)から検索できるようになります。もちろん所蔵する美術館での活用のため各館で所蔵情報を発信していく必要はありますが,visibility や accessibility の向上には総合目録やメタデータの流通を意識する必要があるということをあらためて感じました。

また,展示会カタログには展示品の写真だけでなく,出陳目録や収録されている研究論文が含まれています。これらも重要な美術情報ということで,奈良国立博物館では自館刊行物に関してはOPACで検索できるようにメタデータを入力されているということです。この取り組みが他の美術館でもひろがり,展示された作品から解説が掲載されている展示会カタログが探すことができるようになったらすごいなと思いました。

奈良国立博物館仏教美術資料研究センター蔵書検索
http://opac.narahaku.go.jp/

所蔵情報の発信については,ExcelやPDFをWebサイトにアップするといった手軽なものからXMLデータベースを構築する方法などが紹介されました。なかでも「文化遺産オンライン」という博物館・美術館界の所蔵作品の総合目録+デジタルアーカイブを通じた情報発信方法が気になりました。一部の参加館では文化遺産オンライン検索用APIを使用して各館のWebサイトで検索・閲覧を可能にする試みがなされているとのこと。大学図書館でいうところの JAIRO Cloud のようなものといえるでしょうか。

ちょうど2012年9月には全国美術館会議 情報資料・研究研究部会でもワークショップが開催されるということなので今後の展開が楽しみです。

文化遺産オンライン
http://bunka.nii.ac.jp/

外部連携機能(検索用API)による活用展開について
http://bunkaedit.nii.ac.jp/system_03.html

ワークショップ「所蔵作品情報の発信 — 《文化遺産オンライン》による実践」について
http://www.zenbi.jp/data_list.php?g=17&d=50